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東京高等裁判所 昭和54年(ネ)795号 判決 1982年2月16日

昭和五四年(ネ)第七三三号事件控訴人 同年(ネ)第七九五号事件被控訴人 甲野花子

右訴訟代理人弁護士 金住典子

昭和五四年(ネ)第七三三号事件被控訴人 同年(ネ)第七九五号事件控訴人 甲野太郎

右訴訟代理人弁護士 木内俊夫

藤森勝年

主文

一  昭和五四年(ネ)第七三三号事件控訴人(同年(ネ)第七九五号事件被控訴人)の控訴に基づき原判決主文第二、第四項を次のとおり変更する。

昭和五四年(ネ)第七三三号事件被控訴人(同年(ネ)第七九五号事件控訴人)は同事件控訴人(同事件被控訴人)に対し金一七〇〇万円及びうち金四〇〇万円に対する昭和五一年一月二八日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

昭和五四年(ネ)第七三三号事件控訴人(同年(ネ)第七九五号事件被控訴人)のその余の請求を棄却する。

二  昭和五四年(ネ)第七九五号事件控訴人(同年(ネ)第七三三号事件被控訴人)の控訴を棄却する。

三  訴訟費用のうち第一審の一〇分の九及び当審の全部を通じてこれを一〇分し、その八を昭和五四年(ネ)第七三三号事件被控訴人(同年(ネ)第七九五号事件控訴人)の、その余を同年(ネ)第七三三号事件控訴人(同年(ネ)第七九五号事件被控訴人)の各負担とする。

事実

昭和五四年(ネ)第七三三号事件控訴人(同年(ネ)第七九五号事件被控訴人、以下第一審原告という)代理人は、「原判決中第一審原告の敗訴部分を取消す。昭和五四年(ネ)第七三三号事件被控訴人(同年(ネ)第七九五号事件控訴人、以下第一審被告という)は第一審原告に対し更に金九〇〇万円及びうち金六〇〇万円に対する昭和五一年一月二八日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。第一審被告は第一審原告に対し原判決添付物件目録(一)記載の建物につき財産分与を原因とする所有権移転登記手続をなし、かつ同目録(二)記載の土地の借地権を譲渡せよ。訴訟費用は第一、二審とも第一審被告の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、第一審被告の控訴に対し、控訴棄却の判決を求めた。

第一審被告代理人は、「原判決中第一審被告の敗訴部分を取消す。第一審原告の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも第一審原告の負担とする。」との判決を求め、第一審原告の控訴に対し、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用及び認否は、左に付加するほか原判決の摘示事実と同一であるから、ここにこれを引用する(但し、原判決八枚目表四行目以下その裏末行まで、及び同一〇枚目表八行目以下同一一行目までを削除し、同一〇枚目裏三行目の「一ないし三」を「一ないし五」と訂正し、同一九枚目表二行目と三行目の中間に「家屋番号二四一番一六」を加える。)。

(主張)

一  第一審原告

(一)  本件離婚にあたり第一審被告よりの財産分与の対象となるべき資産は次のとおりである。

(1) 原判決添付物件目録(一)記載建物

第一審被告が昭和三八年頃建築したものであって、この価額は、鑑定の結果によれば四二二万五〇〇〇円である。

(2) 同目録(二)記載土地の借地権

右土地は、昭和二八年頃、第一審被告が自動車整備工場を創設するに際し訴外乙山春夫から賃借し、同四二年六月一五日賃借期間を四〇年として契約を更新したもので、当該借地権の価額は、鑑定の結果によれば二二六八万円であるが、実際は三五〇〇万円を相当とする。

(3) 第一勧業銀行葛飾支店に対する預金債権

昭和五二年一二月三一日現在、右銀行に対する第一審被告名義の普通預金は八四万七二八六円、同定期預金は八六万六九〇三円、計一七一万四一八九円である。

(4) 生命保険の満期保険金

訴外東京生命保険相互会社を保険者とする保険金三万円、保険金受取人第一審原告及び保険金七万円、保険金受取人第一審被告の各生命保険がいずれも同五三年三月九日満期となり、第一審被告はその頃満期保険金合計一四万円(配当を含む)を受取った。右保険の保険料の払込は昭和一三年三月以降なされ、すべて夫婦の収入から支出されていたものであるから、右保険金も婚姻中に形成された財産である。

(5) 新潟県三島郡与板町《番地省略》宅地一六四・一五平方メートル

右土地は、第一審被告が所有していた二筆の土地を売却してその代金で買受けたものではあるが、もとの二筆の土地は、第一審原告と第一審被告の婚姻中に形成された財産であるから、右土地も当然夫婦共有の財産というべく、その価額は二〇〇万円を下らない。

(6) 同町《番地省略》宅地一〇八・二六平方メートル及び同所《番地省略》宅地五二・八九平方メートル

右土地は、第一審被告の亡父甲野松夫が昭和二八年に国から払下げを受け、同三四年五月三〇日同人の死亡により第一審被告が相続したものであるが、松夫取得時の代金一万三八二五円は第一審被告が夫婦の収入の中から支出したものであるから、右土地も夫婦の共有財産である。然し第一審被告は右土地を昭和五一年に代金二〇〇万円で売却したから、現在では二〇〇万円が財産分与の対象財産である。

(7) 第一審原告が受領すべき監査役報酬金

第一審原告は、昭和五二年八月二〇日まで訴外甲野自動車株式会社の監査役であったところ、第一審被告は、第一審原告が右会社より受くべき監査役報酬金昭和五〇年度分一一六万円、同五一年度分九六万円、同五二年度六六万円を右会社から受領しながら第一審原告に交付しない。

(8) 賃料収入

第一審被告は、前掲(1)記載の建物の階下を甲野自動車株式会社に賃貸し賃料を得ているが、その額は昭和五〇年当時月額七万円であり、同五四年四月以降は同九万円であるから、第一審被告が第一審原告と別居後当審口頭弁論終結時までに受取った賃料額の合計は六五一万円である。

(9) 甲野自動車株式会社の資産、営業利益

右会社は第一審原告が第一審被告と共同で経営してきた会社であるから、その資産、利益は両者で共有すべきものである。

(二)  第一審原告は、第一審被告が自動車の整備工場をはじめてから後は同人と共同で経営にあたり、前記会社を設立してもその営業の実体はかわらなかったもので、財産形成の寄与度は大きく、すくなくとも二分の一と評価できること、第一審原告は既に六一才の高令であるうえ十二指腸潰瘍、甲状腺機能低下症をもつ病弱な身体であること、身体の不自由な長女夏子と同居し、同人の生活の面倒をみてやらねばならない立場にあることの事情をも勘案すれば、前記(1)建物の所有権移転登記及び(2)の借地権の譲渡を求める第一審原告の財産分与の請求は当然認容されて然るべきである。

二  第一審被告

1  第一審原告主張の(一)の(1)の建物が第一審被告においてその主張の頃建築し所有しているものであることは認めるが、その価額は争う。

2  同(2)の土地につき第一審被告が借地権を有することは認めるが、その価額は争う。

3  同(3)の事実は認める。

4  同(4)の事実のうち第一審原告主張のとおり生命保険が満期となり、第一審被告が満期保険金(配当を含む)を受取ったことは認めるが、その余の事実は争う。保険金七万円の分は第一審被告が受取人となっているものであって、第一審被告の特有財産に帰したものである。

5  同(5)の事実のうち第一審原告主張の土地がもと第一審被告の所有であった二筆の土地を売却してその代金で買受けたものであることは認めるが、その余の事実は争う。第一審原告主張の土地は、新潟県立与板高校の災害復旧工事に当りその敷地を提供した訴外丙川秋夫らに対する代替地として、第一審被告が県及び与板町から要請され同人らに売却した第一審被告所有の同町《番地省略》畑一九三平方メートル、《番地省略》畑四二四平方メートルの代金により取得したものであり、しかも右二筆の畑は第一審被告が亡父松夫から相続により取得したものであるから、第一審被告の特有財産である。

6  同(6)の事実のうち第一審原告主張の土地二筆は、第一審被告の亡父松夫が昭和二八年国から払下げを受け、同三四年五月三〇日同人の死亡により第一審被告が相続したこと、第一審被告が昭和五一年に右土地を代金二〇〇万円で売却したことは認めるが、松夫取得の際その代金を第一審被告が支出したことは否認し、その余の事実は争う。右土地は、松夫が第一審被告の姉妹らの協力のもとに国から払下げを受けたもので、これを第一審被告が単独で相続したのは、相続人中唯一の男子である第一審被告に継がせるべきであるとの他の相続人らの共通の意識に基づく結果である。第一審被告が右土地を売却した代金二〇〇万円は当然第一審被告の特有財産である。

7  同(7)の事実は認める。しかし第一審原告は昭和五〇年一月末家を出て以来会社の仕事をしていないから報酬請求権を有しない。

8  同(8)の事実のうち第一審被告が第一審原告主張の建物の一階をその主張の賃料の定めで甲野自動車株式会社に賃貸したことは認めるが、その余の事実は争う。右会社の経営不振のため昭和五五年一一月以降の賃料は未払である。

9  同(9)の事実は否認する。第一審原告は、自動車整備工場の業務には何ら携っていなかったものである。

10  同(二)の主張は争う。

(証拠)《省略》

理由

一  第一審原告の離婚、慰藉料及び弁護士費用の請求について

当裁判所も審究の結果第一審原告の離婚請求並びに慰藉料請求のうち金四〇〇万円及びこれに対する昭和五一年一月二八日以降完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は正当として認容すべく、右の範囲を超える慰藉料請求及び弁護士費用の損害賠償請求は理由がなく棄却すべきものと判断するのであって、その理由は、原判決一一枚目裏五行目以下同一七枚目表五行目まで並びにその裏三行目以下同七行目までの説示と同一であるから、ここにこれを引用する(但し、原判決一一枚目裏九行目の「昭和一五和」を「昭和一五年」と、同一五枚目裏二行目ないし三行目の「昭和四一年」を「昭和四二年」と、同一〇行目の「三二五・二〇」を「三二五・三〇」とそれぞれ訂正し、同一五枚目裏一一行目の「平方メートル」の次に「。もっともうち一筆は相続した土地を売却した代金により買受けたものであるが、実質的には相続財産と同視し得るものである。」を加え、同一六枚目表一行目から五行目終りまでを削除し、同一七枚目裏五行目から六行目にかけての「行為による損害と認めるのは相当でないから」を「行為と相当因果関係にある損害とは認め難いから」と訂正する)。

《証拠判断省略》

二  第一審原告の財産分与の請求について

財産分与は、夫婦がその婚姻中に形成した財産を離婚を契機として清算することを本来の目的とするものであるが、有責配偶者の相手方に対する慰藉及び離婚後の生活扶助の趣旨も含まれるものであることは否定できないところ、本件では、慰藉料は別個に請求され、当裁判所においても前叙のようにこれを認容したので、ここでは口頭弁論終結時における双方の資産をもとに離婚後の生活扶助の点も考慮しつつその分与の額及び方法を定めるものとする。

1  まず第一審原告に関しては、《証拠省略》によると、第一審原告は婚姻以来専ら家庭にあり、第一審被告が自動車整備工場を始めてからは、集金の伝票処理、外注先に対する小切手の発行など経理事務の一部を担当して業務を助けていたが、主として家庭の主婦として家事に従事していたもので、離婚後において生計を維持できる収入の道はなく、現在六一才で十二指腸潰瘍、甲状腺機能低下症等のある病弱な身体であること、資産としては取り立てて挙げるべきものはないこと、なお、第一審原告は昭和五〇年一月二九日家を出たとき現金二〇〇万円を持ち出したほか、同年二月分から第一審被告より一か月おおむね十二、三万円の生活費(長女の分を含む)の支給を受けてきたが(昭和五五年二月までで、その額は合計五三〇万円に達する)、現在では右生活費の支給はとだえていることが認められる。

2  次に第一審被告に関しては、《証拠省略》によると、第一審被告は、昭和二八年頃より独立して自動車整備工場を開き、甲野自動車株式会社を設立して会社組織により業務を行うようになってからも同会社の代表取締役として従前と変らず同一業務に従事しているもので、事業経営の主体であること、現在六八才の高令で病身であること、生活は右会社の代表取締役としての報酬月額二七万円と原判決添付物件目録(一)記載の建物の階下を右会社に賃貸して得られる賃料(従前は月額七万円であったが昭和五四年四月以降は同九万円となった)とによって維持していること、もっとも、右会社は昭和五四年頃から欠損が続き、第一審被告は昭和五五年一一月分から右給料の支払いのみならず、右賃料の支払いも受けていないことが認められる。

3  資産については

(1)  第一審被告が原判決添付物件目録(一)記載の建物を所有し、同目録(二)記載の土地につき借地権を有することは前認定のとおりであり、《証拠省略》によると、昭和五四年九月時点での右建物の価額は四二二万五〇〇〇円、右土地の借地権価額は二二六八万円(賃貸人に支払う名義変更料を差し引いたもの)であることが認められる。そして右借地権は昭和二八年中取得し、右建物は同三八年頃第一審被告が建築したものであることは前認定のとおりであるから、右資産はいずれも第一審原、被告の婚姻中に形成されたもので、財産分与の対象となるべきものである。

(2)  《証拠省略》によれば第一審被告が、昭和五二年一二月三一日当時有していたという預金は、訴外第一勧業銀行葛飾支店に対する普通預金八四万七二八六円、定期預金八六万六九〇三円であることが認められ、特段の事情の認められない本件では、当該預金債権は、当審口頭弁論終結時までその価値を維持しているものと推認することができる。しかして右預金債権も婚姻中に形成された財産というべきである。ただ、《証拠省略》によると、右銀行に対する預金は昭和四九年一二月三一日当時は普通預金四万七〇〇九円にすぎなかったことが認められ、したがって、残余の預金は、第一審原告が家を出て夫婦の共同生活が事実上解消された同五〇年一月二九日以後になされたものということができるので、この事実は分与の額を定めるにあたり「一切の事情の一」として斟酌されるべきものである。

(3)  《証拠省略》によれば、第一審被告が昭和五三年三月九日満期となった第一審原告主張のような生命保険金合計一四万円(配当金を含む)を受領したが、当該各生命保険はともに昭和二三年三月一〇日に契約され、保険料は満期まで払込まれてきたものであるから、受取人名義の如何をとわず、前記保険金は夫婦共有の財産として財産分与の対象となるものである。

(4)  《証拠省略》によれば、第一審被告は現に新潟県三島郡与板町《番地省略》宅地一六四・一五平方メートルを所有しているが、右土地は、先に第一審被告が亡父甲野松夫(昭和三四年五月三〇日死亡)から相続した右同所《番地省略》畑六畝七歩(後に右同所《番地省略》畑一九三平方メートル、及び《番地省略》畑二四平方メートルに分筆された)を訴外丙川秋夫外一名に売却して得た代金(右売却は、第一審被告が新潟県の要請により、県立与板高校の災害復旧工事のため敷地を提供した右丙川秋夫外一名に対しその代替地とするためにしたものである)をもって訴外丁原冬夫より買受けたものであることが認められるから、相続土地と同視し得るものということができるのであり、しかも相続した前記土地自体は、亡松夫が自作農創設特別措置法一六条により国から売渡を受けたものであること前掲証拠に照らし明らかであり、松夫の右土地取得について第一審原、被告がその対価を出捐したとする原審及び当審における第一審原告本人の供述はそれ自体明確を欠き措信し難いから、前示土地は第一審被告の特有財産であって財産分与の対象から除外さるべきものである。

(5)  《証拠省略》によれば、第一審被告が前同町《番地省略》宅地一〇八・二六平方メートル及び《番地省略》宅地五二・八九平方メートルを亡父松夫から昭和三四年五月三〇日相続したこと、松夫は右土地を昭和二八年に国から代金一万三八二五円で払下げを受けたものであることが認められる。しかるところ第一審原告は、松夫が払下げを受けた際支払った右代金は第一審被告が夫婦の収入から支払ったものであると主張し、《証拠省略》中には右主張に副う部分があるが、右供述部分は、《証拠省略》と対比して措信できない。したがって、右土地も第一審被告の特有財産というべきであり、第一審被告が昭和五一年右土地を代金二〇〇万円で売却したことは弁論の全趣旨によって認められるが、右代金二〇〇万円も当然第一審被告の特有財産に属し、本件財産分与の対象から除外さるべきものである。

(6)  《証拠省略》によれば、第一審被告が、第一審原告主張のとおり、同原告の監査役報酬相当額を右会社から受取ったことが認められる。そして、第一審原告が右会社の監査役であることにより前記金額相当の報酬請求権があるとすれば、右会社の第一審被告に対する支払いは非債権者への弁済になり、もしその弁済が有効となるならば、第一審被告は法律上の原因なくして受益し、第一審原告に損失を被らせたことになり、第一審原告は第一審被告に対し不当利得の返還を請求することができるが、前記弁済を有効とすべき事由がない限り、第一審原告は、当然には第一審被告に対し前記金員の交付を求めることはできず、(第一審被告は右会社に対して前記金員を返還すべき義務を負うにとどまる)さりとて第一審被告が右会社に対し返還義務を負う不当利得金を同人の資産として評価し、財産分与の対象とすることも相当ではない。

(7)  第一審被告が甲野自動車株式会社の代表取締役であることは前認定のとおりであるが、同会社が第一審被告と別人格の法人である以上それが如何に第一審被告の個人企業と実質的に異らないものとしても、同会社の資産及び営業利益が法律上当然に第一審被告個人の資産及び利益となるものではないから、これらのものは本件財産分与の対象外というべきである(同会社の営業利益については昭和五四年ころ以降欠損が続いていることは前説示のとおりであり、また、《証拠省略》によれば、資産としては昭和五六年六月三〇日現在、機械器具・工具器具備品・電話加入権その他価格合計約七〇万円が存することが認められるが、既に昭和五〇年一月家を出た第一審原告の従前の事業貢献と右資産の存在との関連はすこぶる不確かであり、右資産の存在を財産分与の額を定めるにつき斟酌すべき事情の一とすることも相当ではない)。

以上認定の事実に基づき本件に顕れた一切の事情を斟酌のうえ勘案するときは、本件離婚に伴う財産分与としては、第一審被告をして第一審原告に対し金一三〇〇万円を支払わしめるを以って相当とするものと判断される(第一審原告の申し立てる建物所有権移転登記及び借地権の譲渡は過剰な分与と認められ、これを採用することはしない)。

三  結論

以上の次第で、原判決のうち第一審原告の離婚請求並びに慰藉料四〇〇万円及びこれに対する遅延損害金の請求を認容し、右範囲を超える慰藉料及び弁護士費用の損害賠償請求を棄却した部分は相当であるが、財産分与の額を五〇〇万円と認定した部分は不当であるので、第一審原告の控訴に基づき原判決主文第二、第四項を本判決主文第一項のとおり変更し、第一審被告の控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、九二条、八九条を適用し、仮執行宣言はこれを付さないのを相当と認めるので右申立を却下し(なお、慰藉料四〇〇万円とこれに対する遅延損害金については、原判決の仮執行宣言の効力は維持されている)、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 蕪山嚴 裁判官 安國種彦 濱井一夫)

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